Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by 地脇聖孝, 福島原発告訴団
Commenting on behalf of the organisation

 私は、福島第1原発事故当時、福島県内に居住していました。事故直後の県内や周辺地域の混乱状況は今でも克明に記憶しています。当時、県内で事故を経験した者のひとりとして、今回の新勧告案には反対を表明します。
 その理由は、緊急時被ばく状況と現存被ばく状況における基準が事実上統合され、平時でも1〜10ミリシーベルトの範囲内で各国が放射線防護の基準を決めればよく、1990年勧告では明確にされていた「下限値を参考レベルとして採用」という点も新勧告では曖昧にされているからです。このような勧告に移行すれば、平時における放射能防護が後退することは明らかです。次の原子力事故が起きるという前提の下に、住民に被ばく受任を迫るものです。人工放射線による追加被ばくについて、年間1ミリシーベルト以内を原則とする1990年勧告を変える必要はありません。
 事故当時18歳未満だった福島県民で、甲状腺がんまたはその疑いと診断された人は現在すでに300人に上っています。これらは日本政府が住民の避難政策をとらず、防護も十分行わなかったことによる被害です。原子力事故のたびにこのような被害を受忍せよというのであれば、原子力によりいずれ人類は滅亡することになるでしょう。
 今回の新勧告案の「科学的」根拠になったと思われる、福島県伊達市におけるガラスバッジによる線量測定結果は、住民の被ばく量を不当に過小評価するものです。「専門家」として測定に関わった早野龍五東大教授が、データのねつ造に関わったとして論文撤回に追い込まれています。このような人物が関わった測定の結果を基に、被ばく基準を緩和する新勧告案を取りまとめること自体が許されません。
 ICRP第4委員会のジャック・ロシャール委員長は、勧告第111号の主筆であるとともに、伊達市でICRPダイアログセミナーの講師を務めてきました。早野教授と結託し「被ばくが健康に有意な影響を与えない」とのデータだけを意識的に収集することによって、被ばく基準の緩和を行うことがロシャール委員長の狙いであり、彼は一貫してそのために行動してきました。
 原子力から利益を受けない中立的第三者による新しい体制の下で、住民の声を聞きながら民主主義的に策定された指針に基づき、放射線からの住民防護は行われるべきものです。国際原子力ロビーの利益のために、人間の健康や生活、社会的基盤を犠牲にしてもかまわないと考えるロシャール氏のような人物は一般市民にとって有害です。私は最も強い被害を受けた福島県民のひとりとして、ロシャール氏を解任し、ICRPから追放するよう求めます。


Back